志賀山流独自の型や小道具など【3】

清元 保名

小説や映画などでおなじみの安倍晴明ですが、その父母は伝説や古浄瑠璃などで、父・保名、母は葛の葉(実は狐の化身)としてえががれています。
その父・保名が葛の葉と出会う前、葛の葉の姉である榊の前を目の前で失い、形見の衣を肩にかけその姿を求めて狂乱する、という演目です。

保名の舞台への登場は「かけり」と言いますが、志賀山流では舞台上手、背景の山の景色からのかけりになります。他流派では、その逆の下手または花道からのかけりが多いようですが、理由については明確ではありません。
現宗家・志賀山登羅が、かけりの方向が逆だと指摘した舞踊評論家に、志賀山流ではこうです、先生からそう習いました、と反論したのが思い出されます。

また、保名では想い人の形見の小袖を肩にかけて舞いますが、他流派は本物の小袖ではなく小道具的なものを使いますが、志賀山流では小袖を広げて身体にまとい、抱きしめる振りなどがあるため、本物の小袖を使用します。
小道具的なものに比べて、かなりの重さがあります。

他には、狂乱ものや変化ものにはよく「横目」(顔を正面に向け、目だけで横を見る)を使いますが、これを考案したのが、志賀山流に深く関わった歌舞伎役者の中村仲蔵だと言われています。
中村仲蔵については、またの機会に書かせて頂きます。

文責 宗家代理 志賀山 律

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